
2017年の夏、「スペシャルティコーヒー」のことをよく知らないままに、Qグレーダーという資格だけ取ってしまい、さてこの先どうしようと途方に暮れていました(当時は仕事で使う予定だったのです)。
Qグレーダーのトレーニングの前に、スペシャルティコーヒー協会(Specialty Coffee Association)のホームページで教材を探して必死で予習をしたものの、基本的な知識が圧倒的に不足していました(今でも全然足らないけど)。
コーヒーの品種、産地、処理方法、焙煎、カッピング(テイスティング)、抽出方法など、コーヒーの全体像がつかめるような本を探していたところ出会ったのが「The World Atlas of Coffee」。
日本では「ビジュアル スペシャルティコーヒー大事典 普及版」というタイトルで翻訳されています。
種からカップまで(From Seed to Cup)の過程がよくわかる
種からカップ(消費者に届く)まで一貫した品質管理が行われていて、その結果、素晴らしい美味しさを味わえるコーヒーのことを「スぺシャルティコーヒー」と呼びます。
この本では、種からカップまでの過程が詳しく説明されています。
コーヒーがどのように栽培され、収穫され、処理されて取引されるのか一連の流れが見えると、普段飲むコーヒーにどれだけの手間や労力がかけられているのかがわかって、美味しく淹れたい、しっかり味わいたいと思うようになりました。

コーヒーの品種による特徴がよくわかる
コーヒー専門店でコーヒーを買うと、パッケージにコーヒーの品種が書いてあります。
コーヒー発祥の地はエチオピアで、ティピカという原種に近い品種から、現在見られる数多くの品種が派生していきました。
その品種自体が際立った特徴を持つものもあれば、風味がテロワール(生産地の土壌や気候などの自然環境)や収穫後の処理方法に大きく左右される品種もあるそうです。
主要な品種の特徴が説明されているので、品種ごとに飲み比べてみるのも面白いです。
コーヒーの生産地の特徴がよくわかる
この本の一番の売りと言ってもいいかもしれませんが、生産地ごとの説明がとても詳しいです。
普通にコーヒーを楽しむだけならそこまで詳しい知識は必要ないですけど、原書のタイトルに「world atlas(世界地図)」とあるように、まさに世界地図を見るような感覚で読んでいくと、へー!っと思うような発見があって楽しめます。
たとえば、最近買ったこのコーヒー。
タンザニアのタリム地区が生産地なのですが、この本の中で「ケニアの国境に近い北方の小さな地区。生産量は少なく、設備も限られているが、近年高品質のコーヒーが生産されるようになり注目が高まっている。それに伴い生産量も増えつつあり、過去10年で3倍になっている」と紹介されています。※私の簡訳なので、日本語版の翻訳とは多少異なるかと思います。
タンザニアのタリム地区がどんなところか全然想像できないですが、少し解説があるだけでグンと身近に感じますよね。
スペシャルティコーヒーは、生産された国や地域、コーヒー農家やその地区の組合などが特定できるのも特徴なので、この本を見ながらいろいろな生産地のコーヒーを試してみるのもおすすめです。
コーヒーの淹れ方がよくわかる
フレンチプレス、ポアオーバー(ハンドドリップ)、コーヒーメーカー、エアロプレス、ストーブトップモカポット、サイフォン、エスプレッソ。
代表的なコーヒーの抽出方法について、特徴や美味しく淹れるための方法が詳しく解説されています。
ハンドドリップだけを取ってみても、世の中には数多くのレシピがありますし、エアロプレスに至っては星の数ほど(?)なので、この本に書かれていることがすべてではないのですが、基本的な知識としてはとても役に立つと思います。
コーヒーメーカーかハンドドリップで淹れるのが一般的だと思いますが、アメリカではエアロプレスも人気が高いです。値段も手頃でコンパクトなので、旅行に持っていくにも便利です。
エアロプレス未体験の方は、この本を片手にぜひ試してみてください。
写真が美しい
コーヒー農園の風景や収穫の様子、処理過程などの美しいフルカラーの写真がふんだんに使ってあるのもおすすめのポイントです。
本のサイズが約25x19㎝と大判なので、写真に迫力があって、パラパラと写真だけ眺めていても楽しいです。図鑑のような感覚ですね。
おわりに
上でご紹介した内容以外にも、コーヒーを購入する際のポイントや焙煎についての解説、自宅でのテイスティング方法、グラインド器具の説明など、コーヒーに必要な一通りの知識が網羅されています。
生産地の解説などは、どちらかというとコーヒーにかかわるお仕事をされていらっしゃる方向きなのかもしれませんが、コーヒーのことをもっとよく知りたいという方にも興味深く読んでもらえると思います。
日本語のタイトル通り、コーヒーの事典として持っておきたい一冊です。